概要
本記事では、お菓子やパン作りで使われる小麦の構造について理解を深めていきましょう。
本記事で学べる内容
小麦の構造について
世界で生産されている小麦の種類は、一万種にも及びます。
これらの品種における小麦粒の形は、細めのものや丸みが大きいものなどさまざまあります。しかしながら、その大半は下部へ行くに従って少しふっくらとした卵形をしています。
小麦粒は、硬い外皮で覆われていて、その中にある白い部分が「胚乳」と呼ばれ、製粉工程を経て小麦粉になります。
小麦粒の外皮には、上から下まで深い溝が入っています。これを、「粒溝(りゅうこう)」またはクリーズと呼びます。
この粒溝の反対側の下部には、小麦が出芽(しゅつが)する際に芽や根となる「胚芽」があります。
胚芽の反対の端に生えている短い毛は「頂毛(ちょうもう)」と呼ばれ、収穫や調整作業の際に脱落します。
小麦の断面構造について
ここからは、小麦の断面を外側から順番に見ていきましょう。
外皮(表皮)
一番外側には、小麦粒の約15%を占めている「外皮(表皮)」があります。外皮は、薄い膜で6層構造となる殻状になっていて、生育中と収穫後において小麦内部を保護する役目があります。
製粉工程で小麦粉となる胚乳と選別され、「ふすま」として家畜の飼料として利用されます。
また、ふすまに含まれている大量の繊維分が整腸作用などに効果が見込まれることから健康食品としても利用されています。
胚乳
外皮に包まれるようにして内部にあり、小麦粒の約83%を占めているのが「胚乳」と呼ばれるところです。胚乳は、製粉工程で小麦粉となり、製菓や製パンなどに利用されます。
胚乳の成分には、糖質やたんぱく質、脂質などを含みますが、小麦粒の中心部と周辺部とでは成分が大きく異なります。周辺部に近いほどこれらの成分を多く含んでいます。
また、外皮と胚乳の間には、「アリューロン層」と呼ばれる、やや青っぽい色をした層があります。以前は、「ふすま」として処理されることが多かったのですが、研究が進み、アリューロン層には、灰分やたんぱく質、ミネラルが豊富であることから栄養価が高いことが分かってきました。
胚乳の外皮に近い周辺部には、アリューロン層や外皮部を含むことから不純物の混入が多くなります。そのため、周辺部の胚乳から製造した小麦粉は茶色っぽく色相が悪くなり、酵素を含んでいることから品質劣化にもつながりやすくなります。
胚芽
小麦粒のややふくらんだ箇所にあるのが、「胚芽」と呼ばれているところです。胚芽は、小麦粒の2%を占めていて、小麦の発育に重要な栄養貯蔵庫としての役割があります。
製粉工程では、胚乳とは分離され除去されますが、ビタミンEやミネラル、脂質、たんぱく質などの栄養価が豊富で、健康食品や胚芽ブレッドなどに利用されています。