製菓 雑学

卵の熱凝固性について

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卵の熱凝固性について

概要

本記事では、卵の熱による性質変化について理解を深めていきましょう。

卵の熱で固まる仕組みを見ていきましょう。
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この記事でわかること

  • 卵が熱で凝固する仕組み
  • 卵白の熱凝固温度
  • 卵黄の熱凝固温度
  • 加熱時の注意ポイント
  • 卵の熱凝固性を活かした食品
  • スチームコンベクションオーブンのご紹介

卵は多くのお菓子に使われる素材です。卵の特性理解を深め、今後のお菓子作りに役立ててください。

卵の熱凝固性について卵が熱で凝固する仕組み

卵は、熱を加えると固まる性質を持った素材です。

私達は日頃から、 ゆで卵や卵焼き、スポンジケーキやクッキーなど 、卵を加熱した食品を口にすることがあります。

こうした食品も、卵の熱で固まる特性を活かした料理やお菓子になります。

ここで1つ質問です。
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卵が固まるとは、卵の何が固まるのでしょうか?

結論からお伝えすると、その答えは、卵に含まれる「たんぱく質」です。

熱を加えることによって、卵に含まれる「たんぱく質」が熱変性を起こして硬く固まります。この変性のことを、卵の「熱凝固性」と呼びます。

「変性」とは、熱や振動などの外的刺激によって、本来の特性を失ってしまうことを指します。

卵が熱凝固する温度帯は、卵白と卵黄では違いがあります。その理由は、それぞれに含まれる「たんぱく質」の種類や性質に違いがあるためです。

ここからは、その違いについて見ていきましょう。

卵の熱凝固性について卵白の熱凝固温度

卵白の加熱による変性は、55℃を超えたあたりから少しずつ濃度がついてわずかに固まりはじめます。

60℃を超えてくると、卵白に含まれるたんぱく質のオボトランスフェリンが熱変性しはじめ、白色の軟らかいゼリー状へと変化していきます。

75℃を超えたあたりからしっかりと固まりはじめ、80℃を超えると、卵白のたんぱく質の約50%を占めるオボアルブミンの熱変性が起こり、ほぼ完全に凝固します。

卵白の熱凝固に関するまとめ

・55℃~  徐々に固まりはじめる。
・60~65℃ 軟らかいゼリー状に固まる。
・75~80℃ 完全に硬く固まる。

※卵白は、55℃を超えたあたりから凝固が始まり、80℃で完全に熱凝固します。

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続いて、卵黄の熱変性を見てみましょう。

卵の熱凝固性について卵黄の熱凝固温度

卵黄が固まりはじめる温度は卵白よりも少し高く、65~70℃にかけて軟らかい糊状になります。

そのまま加熱を続けて70~75℃になると、完全に凝固します。

卵黄の熱凝固に関するまとめ

・65~70℃ 軟らかい糊状になる。
・70~75℃ 完全に硬く固まる。

※つまり、卵黄は卵白よりも狭い温度範囲で熱凝固が進むということです。

卵の熱凝固性について加熱時の注意ポイント

ここまでに、「卵白」と「卵黄」の熱凝固温度についてみてきましたが、注意すべきポイントを下記にまとめました。

注意ポイント

注意すべきポイントは、65℃を超えると卵白と卵黄は凝固するスピードが速くなります。

思った以上に加熱時間がかかったり、温度上昇が起こると、想定外に卵黄が固まり食感を悪くしてしまします。

卵黄を多く使ったカルボナーラやカスタードクリームを作る時には、このことを考えた上で、手早く作業を行う必要があります。

卵の熱凝固性について卵の熱凝固性を活かした食品

卵の熱凝固性を活かした食品にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

料理では

卵焼き、ゆで卵、目玉焼き、温泉卵、オムライス、親子丼、溶き卵スープなど。

お菓子では

スポンジケーキ、カステラ、クッキー、カスタードプリン、マカロンなど。

上記以外にも、本当に数多くの卵の「熱凝固性」を利用した食品があります。

その中から、「温泉卵」と「カスタードプリン」を例に熱凝固の仕組みについて解説していきます。

温泉卵の熱凝固について

お湯を65℃くらいに保ち、卵をゆっくりと加熱する。
この65℃という温度が非常に大切なポイントになります。
卵白は軟らかいゼリー状になり、卵黄はやや粘性のある糊状に固まります。

温泉卵は、卵の卵白と卵黄の熱凝固性を正確に理解し、加熱温度をコントロールすることで独特の食感を生み出された食品です。

カスタードプリンの熱凝固について

カスタードプリンは、小麦粉を配合しない、卵と牛乳、砂糖をベースに湯煎焼きで作られるお菓子です。
なめらかな食感に仕上げるためには、温度の管理が重要になってきます。
加熱により65℃を超えると、卵白のたんぱく質が徐々にゼリー状の網目構造を作りはじめます。

温度が80℃を超えるとプリンの骨格が出来上がり、容器を軽く揺らしても水っぽさはありません。軽く揺すって容器中央から液体が出てこなければ完成です。

余熱で火が通り、「す」が入らないように、容器ごと氷水に浸すなどして急冷します。

注意ポイント

しかしながら、誤って加熱を続けてしまい100℃に近づくと、骨格の中に含まれている水分は気化してしまいます。

そのため、プリン液の中にあった気泡内の水分が気化して気泡の跡だけがプリンの内部や側面部に残ります。これが、「す」が入ると言われる現象です。

「す」が入ったプリンは、水分が抜けて本来のなめらかさを失い、少しザラついた食感になります。ポイントは、加熱しすぎないことです。

上手に作れるようになるためには、ある程度の経験が必要になります。その理由としては、作る時の状況により、最適な温度や時間が変化するからです。

例えば、作る量や混ぜ合わせる各材料の温度、オーブンの大きさや火通りのよさ、湯煎に入れるまでにかかる時間、湯煎温度など、様々な条件を理解した上で作る必要があります。

ご家庭で作られる際は、まずは基準となるレシピや環境を設けて、そこから少しずつ微調整していくことをおすすめいたします。


最近では、スチームコンベクションオーブン(通称「スチコン」)が発達しています。本来は業務用ですが、小型サイズで、ご家庭でもご使用の出来る製品が販売されています。

温度と時間タイマーをセットするだけで、あとは、湯煎を準備する必要もなく、スチームで加熱してくれます。適切な卵の熱凝固を行い、簡単にカスタードプリンを作ることが出来ます。

卵の熱凝固性についてスチームコンベクションオーブンのご紹介

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以前、私がパティスリーで使っていた「ラショナル製」のスチコンを2点ご紹介します。

卵の熱凝固性についてまとめ

本記事では、卵の「熱凝固性」について解説しました。熱で凝固するのは「たんぱく質」であることや、「卵白」と「卵黄」の熱凝固による状態変化についても理解できたのではないかと思います。

こうした理論が、皆さまのお菓子作りの知識と技術向上につながることが出来れば嬉しく思います。

それでは、引き続きどうぞよろしくお願いします。

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