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パンはどうして膨らむのか?

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パンはどうして膨らむのか?

「パン」が膨らむ不思議は、知れば知るほど、魅力と楽しさがいっぱいです。

私たちが日常的によく食べる「パン」は、さまざまな形をしています。パンを美味しく焼き上げるためには、捏ね上げたパン生地を、適正に膨らませる必要があります。目的によっては、ピザのように、膨らみを小さくして、美味しく焼き上げるパンもあります。さらには、一見外観は同じように見えても、配合やミキシング、発酵具合によっては、その内相構造は大きく異なります。

疑問に思うこと

では、どのようにすれば、「目的とする膨らみ」のあるパンを焼き上げることが出来るのでしょうか?

その謎を解明するためにも、まずはどのようにして、パン生地が膨らむのかを理解する必要があります。

本記事では、パン生地の膨らむ原理について詳しくみていきましょう。

パンが膨らむ2つの理由

早速ですが、パンが膨らむ理由について答えていきます。ポイントは、下記の2つの視点から考えると分かりやすいです。

パンが膨らむ2つの理由


理由1
小麦タンパクと水で作るグルテン組織

理由2
パン酵母(イースト)による発酵活動

この2点を理解すれば、本題にある「パンがなぜ膨らむのか?」が解決出来ます。そして、実際には、この2点が答えです。実際のパンづくりを想像しながら、解決に結びつけていきましょう。

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パンが膨らむ原理について
学んでいきましょう。

パンが膨らむ理由1の解説

理由1:小麦タンパクと水で作るグルテン組織

パン作りの工程において、ミキシングという捏ねる作業があります。この作業により、小麦タンパクと水が結合し、グルテン組織が出来ます。

グルテン」という言葉ですが、パン作りに関心のある方は、ひょっとすると、耳にしたことがあるかも知れません。まずは、グルテンとは何かについて理解を深めていきましょう。

グルテンについて

グルテンとは、小麦粉を水とともに捏ねることで出来る、粘弾性と伸展性のある網膜状のことです。グルテン組織には、下記のような特性があります。

グルテン組織の2つの特性

1.粘り(粘弾性)
2.伸び(伸展性)

グルテンの特性を理解した上で、改めて、小麦の成分について、見てみましょう。

パン作りの主原料となる「小麦粉」には、約12%のタンパク質が含まれています。タンパク質含量は、小麦の種類によって異なります。下記の比較を参考にしてください。

タンパク質含量の比較

■パンづくりに適している強力粉
12%~13%

■お菓子づくりに適している薄力粉
8%前後

■フランスパンに適している準強力粉
11%程度

▼ こちらの記事も、参考にしてください。▼

関連記事小麦粉の分類

パン作りにおける小麦粉選びは重要です。灰分含有量から加工適性を考え、良質なパン作りを楽しみましょう。

小麦粉に含まれるタンパク質含量のうちの約85%は、「グルテニン」と「グリアジン」が占めています。それでは、「グルテニン」と「グリアジン」には、どのような特性があるのでしょうか?

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少し専門的な話になりますが、
簡潔に説明します。

グルテニンとグリアジンの特性について

下記に、グルテニンとグリアジンの特性について簡単にまとめましたので、見ていきましょう。

グルテニンとグリアジンの特性

■グルテニンの特性(弾性)
弾力は優れるが、伸びにくい。

■グリアジンの特性(伸展性)
弾力は弱いが、粘着力が強く、
伸びやすい。

上記の通り、グルテニンの弾性とグリアジンの伸展性と粘性は、生地の粘弾性と伸展性に大きな影響を与えます。そして、この粘弾性と伸展性の理解は、目的に合ったパンづくりを行うために、非常に大切なことです。つまり、小麦粉に含まれる「タンパク質含有量」、すなわち、「グルテン含有量」と「グルテンの質や形状」は、パン生地に与える影響が大きいことが理解できたと思います。

それでは、このことを理解した上で、下記の 『パンが膨らむ理由2』 を考えると、パンづくりにおけるメカニズムへの理解が深まり、思い通りのパンを焼き上げることが出来るようになります。

休憩しながら、
学びを深めていきましょう。
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※グルテン抽出の動画を挿入予定です。

+ グルテンの抽出について

グルテンの抽出は、下記のグルテン試験に従い行います。

■グルテン試験の手順


20gの小麦粉に、約60%(12g程度)の水を加え、小さな器の中で生地を捏ねる。


よく捏ねた生地を、約10分間、水につけて、その後、もみ洗いする。


すると、グルテンが残るので、グルテン以外を洗い流し、水気を切った後に、重量を量り、その性状を調べます。

結果として、量が多く、なめらかなグルテンほど、製パン性が優れていると言えます。

パンが膨らむ理由2の解説

理由2:パン酵母(イースト)による発酵活動

そもそも、「発酵」とは何でしょうか?「発酵」という活動は、パン酵母にとって、生きていく上で必要な現象です。 パン酵母が生成する「炭酸ガス(二酸化炭素)」が、生地が膨らむ原動力となります。

では、どのようにして、パン酵母は炭酸ガスを生成するのでしょうか? その理由について、順番にみていきましょう。

パン酵母の発酵活動の流れ


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パン酵母も人間と同じで、
生きていくためには、栄養源が必要です。

パン酵母にとって必要な栄養源とは、
ブドウ糖や果糖』です。
それでは、詳しくみていきましょう。
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■発酵活動①

パン酵母は、
小麦粉やパン酵母自らの体内に存在する酵素によって、パン生地中にある「ショ糖やデンプン」を「ブドウ糖や果糖」に分解していきます。

■発酵活動②
分解した「ブドウ糖や果糖」を、自身の栄養源として体内に取入れます。取入れたブドウ糖と果糖を消化し、体外(生地中)へ排出します。

■発酵活動③
その排出物には、「炭酸ガス(二酸化炭素)」、「香味成分(有機酸)」、「エタノール(芳香性アルコール)」が含まれています。

■発酵活動④
上記の3つのうち、「炭酸ガス(二酸化炭素)」が、パン生地を膨張させる原動力になります。

パン酵母にとっての発酵とは?

上記一連の流れから考えると、発酵とは、「パン酵母が生きていくために必要」な現象であることが理解出来ます。

パンが膨らむ答え

本記事の課題、「なぜパンは膨らむのか?」を解決するためには、上記で解説した2つの理由を組み合わせて考える必要があります。

物に例えて考えると分かりやすいのですが、それは、「ゴム風船」です。ゴム風船は、「弾性」のあるゴム風船(理由1)に、息を吹き込む(理由2)ことで薄い膜状に伸びていきます。パンづくりに置き換えて考えると、下記の通りになります。

パンが膨らむ答え


【理由1】
ミキシングによって、パン生地内に形成される、粘弾性の高い小麦タンパクと水の結合物「グルテン膜」。

【理由2】
このグルテン膜に包み込まれた、パン酵母の排出する「炭酸ガス(二酸化炭素)」が、内部から膨張することによって、パン生地が膨らんでいきます。

+ 専門的な内容はこちら

今後、より専門的な解説を挿入予定です。

まとめ

本記事では、「パンがどうして膨らむのか?」について解説してきました。

パン作りにおいて、非常に基本的な考え方であると同時に、とてもたくさんの不思議が詰まった疑問ですよね。

本記事を通じて、こうした問題が少しでも解決が出来れば幸いです。

今後のパン作りにおいて、「グルテン」と、パン酵母が排出する「炭酸ガス(二酸化炭素)」を意識してパン作りを行なうことで、今まで以上にパン作りの楽しさが広がっていくはずです。

それでは、引き続き、「素敵なパン作り生活」を楽しみましょう。

今回は、以上です。
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