概要
小麦粉はパン作りにおいて主な原材料の1つ。使用する小麦粉の性状によって、生地の物性や特徴は大きく異なります。
このことからも、パン作りにおいては、目的に合った小麦粉選びがポイントになってきます。
一口に小麦粉と言っても、非常に多くの種類があります。ここからは、小麦粉の分類分けを行ないながら、小麦粉の特性について理解を深めていきましょう。
用途別分類について
小麦粉の原料である小麦は、品種や栽培方法によって、蛋白質の含有量や性状が異なります。
一般的には、粒の硬い硬質小麦は蛋白質含有量が多く、形成されるグルテンの量が多いとともに粘弾性が高いです。
これに対して、粒の軟らかい軟質小麦は蛋白質含有量が少なく、形成されるグルテンの量が少ないとともに粘弾性は低いです。
用途あるいはタイプ別に、下記のように分類がされます。
タイプ | 原料小麦 | 蛋白質含有量(%) | グルテンの質 | 主な用途 |
強力粉 | 硬質硝子質 | 13.0~11.5 | 強靱 | パン |
準強力粉 | 硬質中間質硝子質 | 12.0~10.5 | 強 | パン、中華麺 |
中力粉 | 軟質中間質 | 10.0~8.0 | 軟 | うどん |
簿力粉 | 軟質粉状質 | 6.5~8.0 | 粗弱 | 菓子、天ぷら |
強力粉とは
硬質小麦を原料として、粘弾性の高い生地を形成します。
強力粉は主にパン作りに使用され、『食パン』や『菓子パン』などに適しています。
一般的な強力粉の蛋白質含有量は12%前後で、13%を超える小麦粉は高蛋白粉、13.5%を超える小麦粉は『最強力粉』と呼ばれます。
推薦
おすすめする『最強力粉』を2品ご紹介させていただきます。
①蛋白13.5±0.5% 灰分0.46±0.04% ②窯伸びがよく、山型食パンに最適。 | ■ゴールデンヨット
①蛋白13.8±0.5% 灰分0.42±0.03% ②カリッとした歯切れでリピーター多い。 | ■スーパーキング
参考
■強力粉原料の主要小麦銘柄
・1CW(カナダ産)
→ No.1 Canada Western red Spring
・DNS(アメリカ産)
→ Dark Northern Sping
準強力粉とは
硬質小麦を原料とするが、やや蛋白含有量が少ない小麦粉。
準強力粉はパンに使用されますが、主に『フランスパン』や『デニッシュペストリー』などの欧風パンや、中華麺などに適しています。
一般的な準強力粉の蛋白質含有量は、11.5%前後です。
参考
■準強力粉原料の主要小麦銘柄
・H・R・W(アメリカ産)
→ Hard Red Winter
中力粉とは
軟質小麦を原料とするが、その中でもやや蛋白含有量が多い小麦粉。
中力粉は、主に『うどん』で使用されます。
参考
■中力粉原料の主要小麦銘柄
・A・S・W(オーストラリア産)
→ Australian Standard White
簿力粉とは
軟質小麦を原料として、その中でもやや蛋白含有量が少ない小麦粉で、粘弾性低い生地を形成する。
中力粉は、主に『菓子』や『天ぷら』で使用されます。
参考
■簿力粉原料の主要小麦銘柄
・W・W(アメリカ産)
→ Western White
等級別分類について
等級別分類をする上で、まずは、小麦粒の構成についてみていきましょう。
小麦粒の構成
- 胚乳[約85%]
- ふすま(皮部)[約13%]
- 胚芽[約2%]
このうちの胚乳部分を粉砕、篩い分け、純化を繰り返し、粒度が直径150㎛以下の粉体として採り分けしたものが小麦粉となります。
このとき、胚芽部分は胚乳部分から簡単に分離できますが、ふすま(皮)部分を完全に分離することは難しい。
製粉時の歩留まりが低い小麦粉ほど小麦粒の中心部分に近く、逆に、歩留まりが高いほど、ふすま部分が混入しやすい。
蛋白質含有量について
胚乳の蛋白質含有量は、中心部付近ほど少なく、ふすまに近い外周部は多くなる。
小麦胚乳の蛋白質において、下記のような特性が見られる。
■中心部に近い蛋白質
・粘弾性は良好である。
・製パン性が高い。
・色相が白い。
・日本では、需要が高い。
■ふすまに近い外周部の蛋白質
・粘弾性は弱い。
・グルテンを形成しない。
・生地に緩みを与える傾向にある。
原料小麦が一定であっても、胚乳のどのような部分を採り分けるか、どのような歩留まりにするかなど、製粉方法により小麦粉の性状が異なります。
この歩留まり程度を表す指標としては、下記の等級別分類表における灰分含有量が参考になる。
【等級別分類表】
等級 | 灰分含有量(%) | 色相 | 酵素活性 | 歩留まり(%) |
特等粉 | 0.3~0.4 | 優良 | 甚低 | 10以下 |
一等粉 | 0.4~0.45 | 良 | 低 | 10~30 |
二等粉 | 0.46~0.6 | 普通 | 普通 | 30~70 |
三等粉 | 0.7~1.0 | 劣 | 大 | 70~73 |
末粉 | 1.2~2.0 | 甚劣 | 甚大 | 73~76 |
小麦粉製品においての灰分含有量を理解することで、製パンやその他の食品への加工適性を見極めることができます。
この灰分含有量および製粉歩留まりは、小麦粉製品の価格に影響します。
より中心に近い部分を採り分けた特等粉は最も価格が高く、それとは逆に、外周部に近いふすま部分を多く含む三等粉や末粉は価格が安い。
しかしながら、価格が最も高い特等粉が品質面においても最も優れているのかというと、これは一概には言えません。
等級 : 特級粉 = 色相 : 優良
色相 : 優良 = 価格 : 高価
色相 : 優良 ≠ 品質 : 優良
その理由としては、作り手がどのようなパンを作りたいかによって、必要とする品質が違うからです。
これについては、別の記事で詳しく説明します。
今回は、以上です。