直捏法は、ストレート法やスクラッチ法とも呼ばれます。
日本でも古くから採用されてきた製法の1つで、
特にリテイルベーカリー(個人店)で、多く用いられる製パン法です。
直捏法は、
\ すべての材料を直接一度にミキシングして生地を作る方法 /
本記事では直捏法の基礎を学ぶことで、直捏法の長所と短所を理解し、
今後のパン作りに役立てましょう。
直捏法が製パンに及ぼす特徴
直捏法が製パンに及ぼす長所について、みていきましょう。
直捏法の長所
- 発酵時間が短い
- 発酵室面積が狭い
- 気泡数が少ない
- 特有の食感
- 風味が良い
直捏法はこのような長所がありますが、
同様に下記のような短所もあります。
合わせて覚えておきましょう。
直捏法が製パンに及ぼす短所について、みていきましょう。
直捏法の短所
- 原材料の影響を受けやすい
- 工程からの影響を受けやすい
- 技術差が出やすい
- 機械耐性に劣る
- 伸展性と柔軟性が低い
- ボリュームが出にくい
- 内相の気泡が粗い
- 気泡膜が厚い
- 老化が早い
これらの短所が懸念材料となり、ホールセールベーカリー(大手や中規模工場など)では使用しにくい製パン法となっています。
しかしながら、
リテイルベーカリー(個人店)では、
直捏法でパン作りをしていくことで、
個性を発揮しやすく、特徴付いたパン作りに活かすことができます。
様々な直捏法について
直捏法の中にも、下記のような様々な製法があります。
直捏法の種類
- 標準直捏法(ストレート法)
- ノーパンチ法
- 速成法
- 2度捏法(再捏法)
これらの製法にも、製品に与える影響や特徴、長所や短所があります。
1つずつ確認しながらみていきましょう。
標準直捏法の製パン法について
標準直捏法は、最も一般的な製法です。
標準的な発酵時間は、2時間です。
標準直捏法は、
全材料を一度にミキシングするため、
仕込みが一度で終わり、
\ 手間がかからない製法 /
その反面、中種法(*)と比べて、生地の最終ミキシング状態がつかみにくい。
適正なミキシング状態を見極めるには、
\ ある程度の経験が必要な製法 /
標準法が製パンに及ぼす長所について、みていきましょう。
標準直捏法の長所
- 仕込みが簡単
- 作業の段取りがつかみやすい
標準法はこのような長所がありますが、
同様に下記のような短所もあります。
合わせて覚えておきましょう。
標準法が製パンに及ぼす短所について、みていきましょう。
標準法の短所
- 生地の発酵管理が難しい
- 機械耐性に劣る
- 生地損傷が大きくなる
- ボリュームが若干劣る
- 老化が早い
- 表皮が硬い
- 内相の気泡が粗い
- ソフトさに欠ける
- 表皮のキメが粗い
- 空洞が出来やすい
これらの短所が懸念材料となり、ホールセールベーカリー(大手や中規模工場など)では使用しにくい製パン法となっています。
ミキシングは比較的アンダーで、
中種法(*)の本捏ね時のように、
生地が薄く伸びるまでは行いません。
ミキシングを行ないすぎると、
生地がベタつきやすくなります。
ただし、脱脂粉乳を配合する場合は、
吸水調整を行ない、
ミキシングを若干長めにします。
ここが問題点
・食感に引きが出て、空洞が出来やすい
・しわが寄り、底離れが起こる
上記のような現象は、
小麦粉のたんぱく値が高い、あるいは質が強い場合に起こりやすい。
このような時には、下記の方法で問題を解決していく。
これで解決!!
- 酵素剤を添加する
- 酵素入のイーストフードを使用する
- 有機フードを使用する
- 市販の酒種を使用する
上記方法により、
\ しなやかな生地になり、生地を良化することが出来る /
また、この場合はミキシングが若干短めにして、
ホイロは、中種法(*)よりやや長めにとる。
ここが問題点
・焼き色が悪い
・クラスト(表皮)が硬い
これで解決!!
- 釜入れ前に生地表面を乾かさない
標準直捏法まとめ
- 手間がかからない
- 仕込みが簡単
- 機械耐性が劣る
- ボリュームが若干劣る
- 老化が早い
- リテイルベーカリー向けの製法
欠点が多いようにみえる
標準直捏法ですが、
素材の風味を、活かしやすい製法です。
適正なミキシング状態を見極める習慣を身に付けて、
\ 良質で美味しいパンを焼き上げていきましょう /
ここまでは、直捏法の中で最も一般的な標準直捏法についてみてきました。
続けて、ノーパンチ法と速成法、2度捏法(再捏法)について詳しくみていきましょう。
ノーパンチ法とは
発酵時間の短長にかかわらず、
\ 発酵途中のパンチを行なわない製法 /
通常配合よりやや多くイーストを用い、
発酵時間が60分以内の場合は、パンチをしないで分割を行ないます。
パンチを行なわない生地は、
弾性(腰)がないため機械耐性がある。
モルダーまたはシータ―にかけても、
ほとんど肌荒れしません。
内相は、スダチ(キメ立ち)も、均一で細かく、ソフトな食感になる。
しかしながら、パンの風味は劣り、
スダチにツヤはありません。
ノーパンチ法まとめ
- 生地に弾性(腰)がない
- 機械耐性がある
- キメが均一で細かい
- ソフトな食感になる
- 風味が劣る
最近のリテイルベーカリーは、このノーパンチ法で1時間発酵を取り入れていることが多い。
\ 比較的、たんぱく値の低い小麦粉に適した製法 /
若干風味は劣るが、
菓子パンのような高配合のパンには
あまり風味に影響を及ぼさないため、
このノーパンチ法を取り入れても
特に問題はありません。
速成法とは
通常配合よりやや多くイーストを用い、
その上で、
『速成フード』の力を利用して、
短時間に発酵させる方法です。
風味および老化はやや劣るが、
作業時間を大幅に短縮できることから、
\ 急ぎのパン作りに向いている製法 /
最近のヨーロッパでは、
長い発酵をとる方法は少なくなり、
30から60分程度の短時間発酵が
主流になってきています。
日本でも、
長時間労働や人手不足問題の解消のために、
一部のリテイルベーカリーでは、
速成法を採用しています。
速成法では・・・
通常の3~4倍量の『臭素酸カリウム』か『アスコルビン酸』が含まれたフードを使い、
短時間(0~30分前後)で発酵を終えて、分割を行ないます。
ここが問題点
発酵時間が短いため、旨みと風味が若干劣る
これで解決!!
- 老麵生地の混入
- 長時間発酵させた中種生地の混入
- サワー種の混入
- 酒種の混入
- 発酵生成物の混入 など
ここが問題点
・ボリュームに欠ける
・クラスト(皮質)が厚い
・引きが強い
これで解決!!
- たんぱく値の低い小麦粉を使用する
- ミキシングをしっかり目に行なう
- 生地を若干軟らかめにする
- 適度な発酵をとる
- ベンチタイムはやや長めにとる
- 砂糖、油脂、卵を若干多く配合
- 発酵過度に注意 など
注意ポイント
・十分なミキシングで、生地にしなやかさを付与
・十分なミキシングで、弾性を弱める
・十分なミキシングで、ソフト感を向上させる
・分割後のベンチタイムも、やや長めにとる
・ホイロもやや長くとり、ボリュームを確保する
速成法まとめ
- 速成に適したフードを使う
- 短時間製造に向いている
- 短時間発酵で旨みが劣る
- 短時間発酵で風味が劣る
- ボリュームが若干でにくい
- クラスト(皮質)が厚い
- 引きが強くなりやすい
- 十分ミキシングをとる
上記に挙げた課題等の解決が出来れば、
今後直面するであろう、
\ 長時間労働や人員不足問題の解決に役立つ /
2度捏法(再捏法)とは
パンチを行なわない代わりに、
\ ミキシングを行なう製法 /
直捏法の中でも、
\ 『機械耐性の向上』を目的とした製法 /
比較的、たんぱく値の高い小麦粉を使用する。
ミキシング時において、
はじめからすべての材料を入れる方法と、
塩を後から加える方法(英国式)がある。
また、冷凍生地の仕込み方法としても、見直されている。
2度捏法(再捏法)まとめ
- 機械耐性がある
- たんぱく値の高い小麦粉に適している
- 冷凍生地の仕込みに向いている
いかがでしたか。
本記事では、直捏法の基礎と直捏による様々な製パン法について学びました。
どんなパンを焼き上げたいか?
この目的に応じた製法を用いることで、
焼き上がってくるパンに、
どう影響を与えるかが理解出来たのでは
ないかと思います。
今回は、以上です。
(*)中種法については、
別の記事で詳しく説明します。