製法の理解

直捏法の基礎を学ぶ

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直捏法の基礎を学ぶ

直捏法は、ストレート法やスクラッチ法とも呼ばれます。

日本でも古くから採用されてきた製法の1つで、

特にリテイルベーカリー(個人店)で、多く用いられる製パン法です。

直捏法は、

すべての材料を直接一度にミキシングして生地を作る方法

本記事では直捏法の基礎を学ぶことで、直捏法の長所と短所を理解し、

今後のパン作りに役立てましょう。

直捏法が製パンに及ぼす特徴

直捏法が製パンに及ぼす長所について、みていきましょう。

直捏法の長所

  1. 発酵時間が短い
  2. 発酵室面積が狭い
  3. 気泡数が少ない
  4. 特有の食感
  5. 風味が良い

直捏法はこのような長所がありますが、
同様に下記のような短所もあります。

合わせて覚えておきましょう。

直捏法が製パンに及ぼす短所について、みていきましょう。

直捏法の短所

  1. 原材料の影響を受けやすい
  2. 工程からの影響を受けやすい
  3. 技術差が出やすい
  4. 機械耐性に劣る
  5. 伸展性と柔軟性が低い
  6. ボリュームが出にくい
  7. 内相の気泡が粗い
  8. 気泡膜が厚い
  9. 老化が早い

これらの短所が懸念材料となり、ホールセールベーカリー(大手や中規模工場など)では使用しにくい製パン法となっています。

しかしながら、
リテイルベーカリー(個人店)では、
直捏法でパン作りをしていくことで、
個性を発揮しやすく、特徴付いたパン作りに活かすことができます。


様々な直捏法について

直捏法の中にも、下記のような様々な製法があります。

直捏法の種類

  • 標準直捏法(ストレート法)
  • ノーパンチ法
  • 速成法
  • 2度捏法(再捏法)

これらの製法にも、製品に与える影響や特徴、長所や短所があります。

1つずつ確認しながらみていきましょう。


標準直捏法の製パン法について

標準直捏法は、最も一般的な製法です。

標準的な発酵時間は、2時間です

標準直捏法は、
全材料を一度にミキシングするため、

仕込みが一度で終わり、

手間がかからない製法

その反面、中種法(*)と比べて、生地の最終ミキシング状態がつかみにくい。

適正なミキシング状態を見極めるには、

ある程度の経験が必要な製法

標準法が製パンに及ぼす長所について、みていきましょう。

標準直捏法の長所

  1. 仕込みが簡単
  2. 作業の段取りがつかみやすい

標準法はこのような長所がありますが、
同様に下記のような短所もあります。

合わせて覚えておきましょう。

標準法が製パンに及ぼす短所について、みていきましょう。

標準法の短所

  1. 生地の発酵管理が難しい
  2. 機械耐性に劣る
  3. 生地損傷が大きくなる
  4. ボリュームが若干劣る
  5. 老化が早い
  6. 表皮が硬い
  7. 内相の気泡が粗い
  8. ソフトさに欠ける
  9. 表皮のキメが粗い
  10. 空洞が出来やすい

これらの短所が懸念材料となり、ホールセールベーカリー(大手や中規模工場など)では使用しにくい製パン法となっています。

ミキシングは比較的アンダーで、
中種法(*)の本捏ね時のように、
生地が薄く伸びるまでは行いません。

ミキシングを行ないすぎると、
生地がベタつきやすくなります。

ただし、脱脂粉乳を配合する場合は、
吸水調整を行ない、
ミキシングを若干長めにします。

ここが問題点

・食感に引きが出て、空洞が出来やすい
・しわが寄り、底離れが起こる

上記のような現象は、

小麦粉のたんぱく値が高い、あるいは質が強い場合に起こりやすい

このような時には、下記の方法で問題を解決していく。

これで解決!!

  • 酵素剤を添加する
  • 酵素入のイーストフードを使用する
  • 有機フードを使用する
  • 市販の酒種を使用する

上記方法により、

しなやかな生地になり、生地を良化することが出来る

また、この場合はミキシングが若干短めにして、

ホイロは、中種法(*)よりやや長めにとる。


ここが問題点

・焼き色が悪い
・クラスト(表皮)が硬い

これで解決!!

  • 釜入れ前に生地表面を乾かさない

標準直捏法まとめ

  • 手間がかからない
  • 仕込みが簡単
  • 機械耐性が劣る
  • ボリュームが若干劣る
  • 老化が早い
  • リテイルベーカリー向けの製法

欠点が多いようにみえる
標準直捏法ですが、
素材の風味を、活かしやすい製法です。

適正なミキシング状態を見極める習慣を身に付けて、

良質で美味しいパンを焼き上げていきましょう

ここまでは、直捏法の中で最も一般的な標準直捏法についてみてきました。

続けて、ノーパンチ法と速成法、2度捏法(再捏法)について詳しくみていきましょう。


ノーパンチ法とは

発酵時間の短長にかかわらず、

発酵途中のパンチを行なわない製法

通常配合よりやや多くイーストを用い、
発酵時間が60分以内の場合は、パンチをしないで分割を行ないます。

パンチを行なわない生地は、
弾性(腰)がないため機械耐性がある。
モルダーまたはシータ―にかけても、
ほとんど肌荒れしません。

内相は、スダチ(キメ立ち)も、均一で細かく、ソフトな食感になる。
しかしながら、パンの風味は劣り、
スダチにツヤはありません。

ノーパンチ法まとめ

  • 生地に弾性(腰)がない
  • 機械耐性がある
  • キメが均一で細かい
  • ソフトな食感になる
  • 風味が劣る

最近のリテイルベーカリーは、このノーパンチ法で1時間発酵を取り入れていることが多い。

比較的、たんぱく値の低い小麦粉に適した製法

若干風味は劣るが、
菓子パンのような高配合のパンには
あまり風味に影響を及ぼさないため、

このノーパンチ法を取り入れても
特に問題はありません。


速成法とは

通常配合よりやや多くイーストを用い、
その上で、
速成フード』の力を利用して、
短時間に発酵させる方法です。

風味および老化はやや劣るが、
作業時間を大幅に短縮できることから、

急ぎのパン作りに向いている製法

最近のヨーロッパでは、
長い発酵をとる方法は少なくなり、
30から60分程度の短時間発酵が
主流になってきています。

日本でも、
長時間労働や人手不足問題の解消のために、
一部のリテイルベーカリーでは、
速成法を採用しています。

速成法では・・・

通常の3~4倍量の『臭素酸カリウム』か『アスコルビン酸』が含まれたフードを使い、

短時間(0~30分前後)で発酵を終えて、分割を行ないます。

ここが問題点

発酵時間が短いため、旨みと風味が若干劣る

これで解決!!

  • 老麵生地の混入
  • 長時間発酵させた中種生地の混入
  • サワー種の混入
  • 酒種の混入
  • 発酵生成物の混入 など

ここが問題点

・ボリュームに欠ける
・クラスト(皮質)が厚い
・引きが強い

これで解決!!

  • たんぱく値の低い小麦粉を使用する
  • ミキシングをしっかり目に行なう
  • 生地を若干軟らかめにする
  • 適度な発酵をとる
  • ベンチタイムはやや長めにとる
  • 砂糖、油脂、卵を若干多く配合
  • 発酵過度に注意 など

注意ポイント

十分なミキシングで、生地にしなやかさを付与
十分なミキシングで、弾性を弱める
十分なミキシングで、ソフト感を向上させる
・分割後のベンチタイムも、やや長めにとる
・ホイロもやや長くとり、ボリュームを確保する


速成法まとめ

  • 速成に適したフードを使う
  • 短時間製造に向いている
  • 短時間発酵で旨みが劣る
  • 短時間発酵で風味が劣る
  • ボリュームが若干でにくい
  • クラスト(皮質)が厚い
  • 引きが強くなりやすい
  • 十分ミキシングをとる

上記に挙げた課題等の解決が出来れば、
今後直面するであろう、

長時間労働人員不足問題の解決に役立つ


2度捏法(再捏法)とは

パンチを行なわない代わりに、

ミキシングを行なう製法

直捏法の中でも、

機械耐性の向上を目的とした製法

比較的、たんぱく値の高い小麦粉を使用する。

ミキシング時において、

はじめからすべての材料を入れる方法と、
塩を後から加える方法(英国式)がある。

また、冷凍生地の仕込み方法としても、見直されている。

2度捏法(再捏法)まとめ

  • 機械耐性がある
  • たんぱく値の高い小麦粉に適している
  • 冷凍生地の仕込みに向いている

いかがでしたか。

本記事では、直捏法の基礎と直捏による様々な製パン法について学びました。

どんなパンを焼き上げたいか?

この目的に応じた製法を用いることで、
焼き上がってくるパンに、
どう影響を与えるかが理解出来たのでは
ないかと思います。

今回は、以上です。

(*)中種法については、
別の記事で詳しく説明します。

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